機動戦士ガンダムZZ外伝 ジオンの幻陽 下 (角川コミックス・エース 168-4)

機動戦士ガンダムZZ外伝 ジオンの幻陽 下 (角川コミックス・エース 168-4)

当初、内容を総括した感想を書こうと思ったんですが、改めて己の文才の無さを思い知り(笑)
加筆部分を中心に、まとなりなくダラダラと書いてみようかと(^^;
なお、超ネタバレなので、未見の人は気をつけてください。

まず、キャラのエルドラド攻略、ラカンアルカディア攻略が出てきていきなりの不意打ち。
どうもZZ序盤のギャグ路線もあって、ネオジオンの人間は変人揃いと見られがちだったので
軍人としてやることはやっているという好例を拾ったのは、裏設定好み抜きに良かったですね。
本編で「ああ」なのは、トリッキーな戦術を使う特殊部隊「ガンダムチーム」の皆さんに
翻弄されてた末の出来事なんですよ…たぶんw


次に、旧ジオン派の謀殺話。ZZ23話「燃える地球」のエピソードと絡めて描かれておりますね。
正直なところ、連載時に喧伝されたフェアトンの策士ぶりが、わりと平凡に思えたんですが
自分の野心達成のためにハマーンとグレミーの政治対立を利用し巧みにのし上がる様は
やっとそう呼ぶに相応しくなったかな。むしろ、うめぇ。


また、この謀殺劇がバーンの不信を抱く発端になり、キレるまでの心情が解りやすくなりましたね。
連載時の、エンケラドゥスの死からチビッ子戦闘参加でのブチ切れの流れを踏まえると
あのパンチは憤りより活の意味合いに思えたので。まぁそれはそれで意味が通るんでしょうけど。


この話では、ミネバ影武者説や旧ジオン派が奉戴するグレミーの存在など
本来、本編で語られるべき重要事項へもフォローされており、外伝としての仕事もやってますね。
実際に作品として触れられるのは初なんじゃないだろか。


「燃える地球」と絡めただけあって、地球降下作戦時に「ガンダムチーム」が登場。
宣伝文句のあった「本編キャラも登場」とこれだったのかぁ。といっても乗ってるMSのみですが
実際、彼らが顔出して台詞を言われると、作品視点が向こうに渡ってしまうんで、かえってこのぐらいが良いです。


加筆でも、どう考えてもごく一部の層に猛アピールしたとしか思えないwマニアックなキャラが登場。
「大人の事情で大っぴらにはできない連中ばかりだけど、わかるやつにはこれ見てニヤニヤしとけ!」
と作者側からの無言のメッセージがひしひしとw ええ、ニヤニヤしますとも。
あと「逆シャア」で登場するホルストがこっそり登場してますね。流石に死にませんでしたが。
「CDA」ではダイクン寄りのカイザスが登場してますし、これらを踏まえるとシャアの下には
ダイクン派と旧ジオン派の二名が政治補佐していたことになるんですかねえ。そう考えると中々面白い構図。


不満点をいくつかと。
一部で人気のリア譲ですが、自棄行為に陥るのが急な印象は最後まで拭えませんでした。
立身出世の望みが次々と絶たれた、原因はフェアトンのせい、というのはわかるのですが
色気を武器にのし上がった彼女だけに、まだまだ挽回する余裕がありそうに思えるんですよね。
連載時ではトントントンと話が進むのでまだそうでもないのですが、加筆話が挿入され流れに「間」が加わると
「あれ?何で?」という印象が顔を出す。せめて二度目の捕縛の際に愛人関係の噂のある
ホワイト大将からの三行半or死の情報がもたらされ、それが理由でってシーンでもあれば…と思いました。


ラーフシステム。物語の核となるアイテムでしたが、単なる対ソーラー兵器になってしまったのは残念でした。
いや物語の展開上、はじめからそういう役割だったんでしょうが、事前にソーラーシステム2投入を察知し
試運転レベルながらもメガ粒子砲を装備して待ち構えるのは、いくらなんでもご都合主義だろうと。
また、ラーフシステムが、その後どうなったのかが全く触れられなかったのも気になりました。
一緒に大破したならともかく、読んだ限りではほぼ無傷でしょうからね。


なんというのかね…ラーフの本来の凄さってのが今ひとつ伝わらないんですよね。
巻末解説や劇中でも説明されてますが文字だけでは見えてこない。あるいは我々読者のSF力が試されてるのかも
しれませんが、少なくとも僕にはイメージ出来なかった。せめてラーフの雛形みたいなものを出して、兵器以外の使い方を
実際に示してくれれば、バーンの運命を託したくなる気持ちや、フェアトンが最期も嘆息する意味に対して
より飲み込みやすく、感情移入しやすくなるように思うのですが…どうですかね。


ただ、これに類似したシステムは現実にアメリカでも研究されている技術されており
もしかしたら具体的な描写は避けたのかも? フェアトンが見せなかった奇跡はそっちを追って見てね…とか。


あとは、人物ファイルはほしかったですね。マイナー作品な皆さんを説明してくれとは考えませんがw
オリジナルキャラクターの人物像・背景はやっぱり気になるんですよね〜。
「紡血」の経験から必ずあると思っていただけに残念でした。


とまぁ、こんな感じになりましたが、総評としては大満足です。
本編内容を巧みに補足しつつ、新たな試みや既存の設定や作品(人物やMS)を組み込んだ作品は僕は知りません。
「外伝」の名の下に新しい物語、新しいMSを組み込んでは、制作側の自己満足な物語、設定面で様々な歪み、を生み続けていた
昨今のサイドストーリーに比べれば、長いガンダム史でも大いに意味のある作品だったと思います。
この作品を通じ、ZZを見てみよう、再評価してみようという流れになってくれればと、一ファンながら切に願うばかりです。


…次回作はやっぱりエゥーゴ側で頼みますw